5月はミニトマト植え付けのベストシーズンです。そろそろ土作りの予定を立て、準備を始めるタイミングですね。トマト用に作った土と、ただの土では収穫結果に雲泥の差が出ます。
土づくりのためにやることはいくつかあり、この記事では土のベース作りともいえる「pH調整=石灰の使い方」についてご紹介します。
少々日々の世話がいいかげんになること以上に、土の品質は株の成長と実に大きく影響します。
収穫するミニトマトのクオリティアップのため、何か一つでもやってみませんか?
土づくり、その前に知っておいてほしいこと
「連作障害」というものをご存じでしょうか。
同じ科の野菜を同じ場所で作り続けていると、植えた野菜の生育が悪くなったり収穫量が落ちてしまう現象のことです。それを避けるため、同じ科の野菜の栽培は、できれば3~5年あけた場所ですることが推奨されています。
トマトは障害が出やすい野菜と言われているので、同じナス科の野菜(ナス・ピーマン・ジャガイモなど)を作った場所は、できるなら3年位避けて植えるようにしましょう。
畑で育てる時の場所を選ぶ時・プランターの土を再利用する時、それまでその土をどう使ってきたかを思い返してみてくださいね。
期間をあけることが難しい場合、取れる対策があります。どこまで効果があるかはわかりませんが、良い土を作る方法でもありますので、やる価値はあります。
連作障害の原因
- 同じ科の作物を植え続けていると、その野菜が必要とする養分だけが多く土から吸収されるため、土の養分バランスが崩れる。
- 作物は根から酸などを分泌していて、それらに集まる微生物や菌・病害虫がいる。同じ科の作物は同じような酸などを分泌し、連作すると特定の微生物が増えてしまう。その結果、土壌内の微生物バランスが崩れる。同じように特定の菌・病害虫も集まりやすく高密度となり、その作物特有の病気にかかりやすい環境となる。
対策
- 堆肥・肥料などの有機物を使う
有機肥料・堆肥は土の中の微生物の餌になる。すると微生物の種類と数が増え、土壌内のバランスが整うことにより、病虫害の発生を抑えることにつながる。また、養分を補うことで、土の養分バランスも改善される。→ 先に示した連作障害の原因である「土壌内の養分・微生物のバランスの崩れ」を整えることで対処 - 接ぎ木苗を植える
ミニトマト苗には、接ぎ木苗とそうでない苗がある。接ぎ木苗は少し値段が高いが、連作障害・病気に強い。
まずは畑を掘り起こそう
どんな野菜でもそうですが、土が固いと根だって伸びづらいですよね。
土づくり部門でやることとしては一番重労働ですが、ここを過ぎると後はだいぶ楽な作業なので、ぜひやっていただきたい。というか、これをやらないと丈夫でしっかりした株に育ってくれないのです。ふかふかの細かい土が理想的ではありますが、ここは体力&己のこだわりと相談しながらやりましょう。深さは30㎝程はほしいところです。(できるなら50㎝、トマトの根は1m近く伸びるそうですよ)
カチカチの土だと根が張れずひょろひょろ細い株に育ってしまい、固くて小さい実が少ししかなりません。お察しの通りおいしくもありません。過去にめんどくさがって土づくりを怠った結果、そういう惨事を経験しましたので、それ以降私は必ずやるようにしています。
後に脇芽かきを少々サボろうとも、かなり伸びた太い茎を「あ、花まで咲いてる……。この分の栄養、もったいなかったな……」と思いながら、ちぎっては投げを数回繰り返せば終わります。多少はその株の実に迷惑をかけているだろうけど、気づくほどの変化はありません。(たぶん)
しかし土は野菜の一生、最終的に実に大きな影響を及ぼします。楽しい収穫のため、頑張りましょう。……ミニ耕運機って、いいよね……。
良い土とは?
良い土づくりがおいしい実をたくさん収穫する鍵になります。目指すところは、「ミニトマトが育ちやすい、排水性・通気性が良く、栄養分がある土」です。
ほとんどの野菜の生育には、pH5.5 ~ pH7.0の弱酸性から中性の土壌が適しています。 ミニトマトに適しているのは微酸性、pH6.0~6.5の土です。
何もしなくても日本の土は酸性に傾きやすくなっています。上記の連作障害のところで書いたとおり、作物は根から酸を分泌しているので、作物を育てている畑はさらに酸性度が上がっていると思われます。
また、土壌内に含まれるカルシウムは水に溶けやすいものが多く、日本は雨が多いため土の中にあまり含まれていません。野菜にはカルシウムを必要とするものも多く、たくさんカルシウムを吸収した野菜は病気に強くなることがわかっているそうです。(カルシウムが足りないと、ミニトマトは尻腐れ病になってしまいます)
土のpHとカルシウム調整の対策は、できればやっておきましょう。
【プランターで栽培する場合】
野菜用・トマト用の土が販売されていますので、それらを使う時は何も手を加えることなく手軽に栽培できます。何も施していないただの畑の土を入れただけでは、いい結果にはなりません。
土壌の調整方法
何を使う?
それは石灰です。土の酸性度の調整とカルシウム補給が同時にできます。
石灰は「サンゴや貝殻が堆積して石となった石灰石」「貝殻や卵の殻」などを原料としており、カルシウムが主成分。アルカリ性なので、酸性に傾いた土の酸度を和らげ中和する方向へ働きます。一般的に使われているのは消石灰・苦土石灰・有機石灰の3種類です。
しかしカルシウムが過剰になると、他のミネラルの吸収を邪魔してしまい、作物に障害が出ることがありますので、量には気をつけて。
それぞれの特徴
アルカリ度が高い順に
消石灰 > 苦土石灰 > 有機石灰
強力なものは特に撒きすぎに注意。
個人的には「ちょっと少ないかな」くらいがいいように思います。足りないものは後から足してやることでなんとかなったりしますが、過剰に与えすぎた場合の対処はかなり大変になったり、枯れてしまうこともあるので。お持ちの石灰の袋に書いてある使用量を超さないつもりで使えば、大きな失敗はないと思います。私も畑のpHを調べたことはないし、きっちりグラムを量ったこともないけれど、「こんなもんかな~、多くはないよな~」くらいの感覚でやってきましたが、うまくやってこれています。(土づくりをしなかった年は散々な結果でしたが)
それぞれの石灰の特徴です。
【消石灰】
水酸化カルシウムのことで、生石灰と水を反応させたものです。
即効性がありアルカリ性が強く、酸性度が強い土を中和させるのに向くようです。効きが強いので根を痛めやすいことがあり、使いすぎると土が固くなります。
そして一番の注意点は、“消石灰と肥料を同時に畑に撒かない!”ということ。ガスが発生し、肥料の成分はなくなってしまうし、作物が元気に育たなくなったり枯れることもあります。
消石灰を撒いた1週間後に肥料を撒き、さらに1週間後に苗の植え付けをします。
【苦土石灰】
苦土石灰の苦土はマグネシウムのこと。
カルシウムとマグネシウム成分を含み、消石灰よりアルカリ度は低めです。消石灰よりややゆっくり効き、マグネシウム成分(葉緑素を作るのに必要、足りないと葉が黄色くなって枯れる)も補えます。消石灰同様、根を痛めやすいことがあり、使いすぎると土が固くなります。
こちらも消石灰と同様で、肥料と同時に撒いてはいけません。苦土石灰を撒いた1週間後に肥料を撒き、さらに1週間後に苗の植え付けをします。(施肥後、数日で苗の植え付け可という説もあり)
【有機石灰】
有機石灰は貝殻や卵の殻からできており、アルカリ性が低めです。
そのため、酸性度の強い土には向きませんが、穏やかに長く効きます。作物への障害も少ないです。肥料と同時に畑に撒くことができ、撒いた後すぐの植え付けも可能で、撒くタイミングを気にせず使用することができるため、初心者にもおすすめです。貝殻などの有機質でできているので、土の中の微生物が活動しやすい環境を作り、土が固くなりません。収穫後の日持ちがよくなる効果も。
使い方
アルカリ度が弱いものほど、畑に撒く量が増えます。
1㎡当たりの使用量・・・土が平均的な酸性度(pH5.5前後)の場合
消石灰 | 100(~200g) |
苦土石灰 | 100(~200g) |
有機石灰 | 100~300g |
・掘り起こした畑(深さ30㎝程)に適量の石灰を撒き、土に混ぜ込む。
これだと2つの手順を踏まないといけないので、めんどくさい方は
・掘り起こす部分に石灰を撒いておき、掘り返しながら土に混ぜ込む
という手もあります。
石灰の塊が残らないよう、まんべんなく混ぜ込むのがポイントです。
石灰のそれぞれの特徴を、まとめてみました
原料 | アル カリ度 |
特徴 | 1㎡ 当たり |
使い方 | 植え付けまで の期間 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|
消石灰 | 石灰岩 | 強 |
即効性がある が根を痛めや すい 使いすぎると 土が固くなる |
100~ 200g |
肥料と同時 に撒かない |
【2週間】 石灰を入れた 1週間後に肥 料を入れる さらに1週間 後に植え付け |
|
苦土石灰 | ↑ |
消石灰の特徴 がやや弱まっ た感じ |
苦土(マグネ シウム)入り |
||||
有機石灰 | 貝殻 卵の殻 |
弱 |
ゆっくり効き 作物への障害 が少ない |
カルシウムを 多く含む・土 の微生物を活 性化し、土が 固くならない |
100~ 300g |
肥料と同時 に撒ける 生育中にも 使える |
すぐに 植え付け可 |
撒く量はお持ちの石灰の表示を優先してください。
畑事情やお好みに合わせて選んでください。
苦土石灰と有機石灰が家庭菜園では良く使われているようです。有機石灰は良い土にもつながるし、使い過ぎの心配がないので、私はほぼ毎年使っています。
「ミニトマトの育て方・土作り編 ~石灰は必要?~」のまとめ
- 土づくり、その前に知っておいてほしいこと
連作障害を避けましょう
避けられない場合は、対策して栽培することをおすすめします - まずは畑を掘り起こそう
固い土では根が張れず、株が元気に育ちません。体力と己のこだわりの許す範囲で、土を細かくしてあげましょう。 - 良い土とは?
トマトには微酸性の土が向いています。日本の土は酸性に傾きやすくなっているので、できれば酸性度の調整をしてあげましょう。 - 土壌の調整方法
土に石灰をまんべんなく混ぜ込みます。
よく使われている石灰には3種類あり、それぞれ特徴があります。ものによっては、使い方を間違えると作物が枯れてしまうことがあるため、注意が必要です。
石灰投入で土壌のベースを整えたら、次は肥料を混ぜて土に養分補給をします。
養分が十分でないと元気な株に育ちません。だからといって肥料を与えすぎると、実のなりが悪くなってしまいます。
肥料についてはこの記事でご紹介しています。